あぁ、あわら贅沢。
あわら贅沢とは?
新幹線の駅前を市民みんなでつくる、というあわら贅沢。
2017.04.05

2023年、あわら市に新幹線の駅ができます。
その時、あわら市はどんな街になっているのでしょう。
あわら市民は、どんな暮らしをしているのでしょう。
ちょっと未来のあわら市を著名な3人の建築デザイナーにプレゼンしていただいた「駅前周辺デザイン市民公開プレゼン」で、みごと最優秀に選ばれた伊藤孝紀先生(名古屋工業大学伊藤孝紀研究室+1-1Architects+TYPE A/B)にお話を伺ってきました。
 


そもそも福井県あわら市のことはご存知でしたか?

はい。若い頃に私用で温泉街を訪れたことがありました。温泉なのになんでこんなフラットな田園のまんなかにポツンとあるんだろう、と思いました。温泉と言えば、だいたい山とか海べりじゃないですか。不思議な立地だな、と。
 

今回、「駅周辺まちづくりデザイン」で再訪されて、印象はいかがでしたか?

JR駅前は、まさに「昭和レトロ」という感じで(笑)。
芦原温泉駅という名前なのに温泉の風情もなくて。というか、あれだけ駅前に人がいないというのは全国的にも珍しいのではないでしょうか。正直、最初はちょっと心配になりました。

「人がいる」「なにげない暮らしのシーンがある」というのは大切で。さまざまな地域でまちづくりをお手伝いしていますが、やっぱり観光施策だけではダメで、「日常」がいきいきと息づいてる街をデザインできるかどうかがカギなんです。こどもが公園でたのしく遊んでたり、おじいちゃんがベンチで世間話してたりっていう文化風土こそが「そこだけでできる体験」であり、価値なので。
 

いつもまちづくりで意識されることは、どんなことですか?

私は1993年にこの分野(都市計画・建築デザイン)を学び始めたのですが、その頃はまだ、まちづくりと言えばボランティア的なニュアンスが強かった時代です。奉仕の精神というか、ビジネス色がなかった。一方で、まだまだハコモノ行政全盛で、施設をつくって終わりというのも多かったですね。つまり、いかに利益を生み出していくかというエリアマネイジメントの発想や、大きな意味でのデザイン思考がなかったので、私はそこをずっと頑張ってきた感じです。

あくまでも主役は、市民。市民と深くかかわりながら、彼らが能動的に動き出せるような舞台装置やシナリオをつくっている感覚なんです。ハードのデザインももちろんやりますが、それは最後の最後で、大切なのは人間によるストーリー。やはり市民が主役になって熱くならないと、「日常」は変わりませんから。
 

今回のあわら市でも、市民と深く対話されているのが印象的でした。

もちろん現地視察もしましたし、徹底的にあわら市をリサーチしましたね。まちの歴史や地形、統計、市民の思いなどなど。「アイデアの源は街にある」といつも学生たちにも言ってるんですが、今回ご提案したいくつかのアイデアも綿密なリサーチから生まれています。

例えば、いちばん最初に思いついたのが、駅前に畳の大広間をつくる“百畳だたみ”のアイデアだったんですが、これもあわら市を調べるなかで出てきた「関西の奥座敷」「ちはやふるカルタ」「老舗温泉旅館の宴会場」といったキーワードからの発想です。そして何より、そんな贅沢な場所が駅前にあるなんてたぶん日本初・世界初かもしれないなって。こういうの意外と重要なんです。なにかに特化しておもいきり振り切ると、市民のモチベーションは否が応でも盛り上がります。
 

伊藤先生による駅前将来デザイン画

市民公開プレゼンでは、“贅沢おむすび”や“アグリモーター”のアイデアも大変好評でした。

おむすびは「コシヒカリは福井県が発祥」というのがネタモトですし、アグリモーターは「広い田園風景」からインスピレーションを受けました。どれも、あわら市民にとってはあたりまえにある日常だけど、ひとりひとりが知恵を出し合ってちょっと違う角度から光を当てれば、日常がキラキラと輝きだします。まさに、あぁ、あわら贅沢(笑)。

私は三重県の出身なんですが、生まれた田舎町にお祭りがありまして、そのお祭りの時は全国から10万人もの人が来る。街の人も、そのお祭りのために一丸となる。その原体験があるので、コミュニティの可能性を信じてるんです。
 

伊藤先生には今後もあわら市にご協力いただけると思うのですが、「あぁ、あわら贅沢」をブランドスローガンとして、あわら市はどんなまちづくりをしていけばいいでしょうか?

アドバイスと言ったらおこがましいですが、「急がば回れ」ですね。市民の方々が等身大でできることを積み重ねていくようなまちづくりが理想ではないでしょうか。

まず、「あわらならではの贅沢って何だろう」と考えて、それを広めたり生み出したりするために自分たちでできることを、肩ひじ張らずに、はじめてほしいですね。 いっしょに頑張りましょう!

そうすれば、6年後には新幹線からお客さんが降りてくれる街になってると思いますよ。
 

最後に、伊藤先生が発見された「あわら贅沢」があれば、教えてください。

ひとつは、最後の滝瓦職人のおじいちゃんを支える娘さんの姿。そして、その滝瓦のオブジェが駅前にあること。伝統に対する、街の敬意を感じました。

ふたつめは、駅近くの御総菜屋さんの「母の味」。実際に働いてるおかあさんの笑顔も、じつにいいんですよ。ふだんが美味しいって、最高の贅沢じゃないですか?
 

伊藤先生、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。


●PROFILE:

伊藤 孝紀(TAKANORI ITO)

国立大学法人 名古屋工業大学大学院 社会工学専攻 建築・デザイン分野 准教授
1974年三重県生まれ。1994年TYPE A/B設立。
2007年名古屋市立大学大学院芸術工学研究科博士後期課程満了。
07年より現職、博士(芸術工学)。

都市計画、建築、インテリア、家具のデザインや市場分析からコンセプトを創出した「ブランド戦略」と「街づくり」を実践。
2027年リニア中央新幹線開通する名古屋駅(西エリア)のデザインアーキテクトに就任。
桑名駅周辺土地利用懇話会 座長、名古屋市栄ミナミまちづくり会社 顧問など歴任。
主な受賞に、2013年 日本サインデザイン協会デザイン賞 最優秀賞、グッドデザイン賞、2015年 日本建築学会作品選集 新人賞など多数。主な著書に、「まちを演出する 仕掛けとしてのデザイン」鹿島出版会:2013年2月など。

 


 

スポット情報
JR芦原温泉駅前
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