あぁ、あわら贅沢。
あわら贅沢とは?
【あわら贅沢な人】漫画『送球ボーイズ』の原作者・フウワイさん
2019.01.18

 

ハンドボールをテーマにした漫画で、

いままでにない長い連載を続けている『送球ボーイズ』。

その原作者があわら出身だということは、

まだ、あまり知られていません。

毎週毎週の締め切りに追われながら

東京でがんばっておられるフウワイさん。

ハタチを過ぎるまで描いたこともなかった漫画を、

いま、職業にされているフウワイさんの

漫画家への道のりと故郷あわらへの想いを

語っていただきました。

 

 

―――お生まれが、あわらですか?

フウワイ:JRの芦原温泉駅のほうです。旧金津ですね。29歳まであわらにいて、いまは東京です。

 

―――漫画家のお仕事をされるようになった、きっかけは?

フウワイ:23、4歳の時に会社で働きながら趣味で漫画を描きはじめました。それが、いまの連載の前身となる漫画でした。5年ぐらい続けていたら、『裏サンデー』という漫画サイトの編集者から「連載しないか」という連絡をいただきました。

 

―――編集者さんの目に触れたのは、なぜ?

フウワイ:『裏サンデー』が開設されたのが今から5、6年前なんですが、そのころ私が漫画を投稿してたサイトがありまして、そこから何人かが『裏サンデー』でデビューしたんです。後発で私も声かかって、という感じでした。ちょうどその時期から、WEBに漫画を投稿していた人がデビューすることが一般的になってきたころで。そのムーブメントにうまく乗っかれたかんじです。

 

―――どんな投稿サイトですか?

フウワイ:趣味の人たちが無料で漫画や小説を投稿するサイトでした。

 

―――昔でいう同人誌のような。

フウワイ:そうですね。

 

―――編集者さんから連絡があった時は、「キタ!」という感じでしたか?

フウワイ:そうですね。30手前の年齢も年齢でしたから、正直、うれしかったですね。

 

 

―――東京に来られたのは?

フウワイ:連載がはじまって、しばらくしてからです。

 

―――原作と作画があって、フウワイさんは原作を担当されてますが、作画のサカズキ九さんとは、もともとお知合いだったんですか?

フウワイ:いえ。編集者さんのご紹介で。

 

―――週刊で連載されてますが、どんなタイムスケジュールなんでしょう?

フウワイ:私が下書きまでやってます。ラフを描いた段階で編集者に見てもらって意見もらって、決定したらもう少し詳細に描き込んで作画のサカズキさんに渡す。で、作画してもらってる間に私は次のストーリーを考える、という流れです。

 

―――それを一週間で。

フウワイ:はい。

 

―――大変ですね!

フウワイ:まぁ、週刊なので、毎週締め切りがくるので。時間的な制約が多いのでしんどいですね。締め切りまで1、2日でも何も出てこない時がやっぱりあって。自分がゼロから作らなくちゃならない立場であるというのは、プレッシャーですね。

 

―――アイデアが出てこない時は編集者さんや作画さんと相談されるんですか?

フウワイ:する時もありますが、彼らも自分の担当があるので手間をとらせるのも悪いし、土台となる部分は自分ひとりでやらないといけないと思ってます。ハンドボールを漫画にするには、ハンドボール経験の有無は大きいので。

 

―――年中無休で。

フウワイ:何もない日というはあまりありませんね。取材したり資料をつくったり、先の展開を考えたりで。

 

―――そんな暮らしを、もう何年?

フウワイ:連載がはじまってからなので、もうじき3年ですね。

 

 

―――最初と今とで、漫画に対する意識が変わったりしてますか?

フウワイ:デビュー前は趣味だったので、自分の主観で好きなものを描いてるだけだったんですが、仕事になると、ハンドボールをやったことない人にも理解してもらわないといけないので、そこが大きな違いです。編集者などの客観的な意見が入って来ると自分の至らない部分や苦手な部分も見えてきます。より多くの人に受け入れてもらいやすい形を考えるようになりました。

 

―――読者の方からの感想が届いたりもするんですか?

フウワイ:はい。ときどきお便りをもらいます。あと、イベントとかに出た時は「生の声」を聴くこともありますね。

 

―――やっぱりハンドボール経験者の読者が多いんですか?

フウワイ:そうですね。サイン会などに来てくださるのは経験者の方が多いですが、未経験の方から反応をいただくことも多いです。

 

―――厳しい世界だから、やっぱり人気が落ちてくると打ち切りということも。

フウワイ:はい。

 

―――そこをなんとか持続させていくのが。

フウワイ:はい。大変です。いまは漫画雑誌だけでなくサイトやアプリ、SNSなどで人気が出てデビューみたいなことも多いので、ライバルが多いんです。昔は漫画家になるのが大変だったと思うんですが、発表の場が増えて敷居が低くなったぶん、なるのが簡単になったぶん、生き残るのが厳しいのではないかと思います。

 

―――現在、ハンドボールの漫画で続いてるのは「送球ボーイズ」だけですか?

フウワイ:私が知ってる限りでは、4巻以上つづいてるのは、うちだけだと思います。2月に12巻が発売予定です。

 

―――ハンドボールを題材にされた動機は?

フウワイ:ハタチ過ぎまでまったく漫画を描いたことなかったので、自分が経験したことがない題材で書けると思わなかったんです。あと、ハンドボールの漫画で長く続いたものがなかったので、学生の頃からつねづね「なんで誰も書かないんだろう」と思っていました。誰もやらないのなら僕がやってみようかな、と思って描きはじめました。

 

―――それまで漫画はまったく描いたことがなかったんですか?

フウワイ:はい。

 

―――絵を描くことも?

フウワイ:そうですね、そんなに。学校の美術の時間ぐらいで。昔は、投稿したり賞に応募したりしてそこから漫画家のアシスタントになって何年か修行してデビュー、という流れが一般的でしたが、私たちのころから趣味で描いてた人がいきなりデビューするという流れができてきたように思います。実際、『裏サンデー』で連載されてる方もそんな人が多いです。必ずしも、幼少期から漫画家ひとすじ、という人だけではないですね。

 

―――あわら市の子どもたちの中にも漫画家志望の子どもがいると思いますが。いわゆる漫画家修業は、どんなふうにされたんですか?

フウワイ:私の場合は修業は何もしてなくて。でも、あんまり偉そうに言えないですが、やっぱり書きたい熱意がある時に書かないとアイデアは枯渇していくので。私も30過ぎていたら漫画家になろうとは思わなかっただろうし。描ける時に描けるものを描くのが、まずは大切だと思います。

 

―――熱意さえあれば、技術は後から付いてくる?

フウワイ:そうですね。教えてもらえる場合もあるし、描いてみないとわからないことも多いし。まずは一本描き上げてみるというのは大事だと思います。

 

 

―――漫画家としてデビューされた時、まわりの反応はいかがでしたか?

フウワイ:正直、まわりに隠して描いてたので。本当に誰にも言わずに。「休みの日なにしてるの?」って聞かれても「漫画描いてる」とは言わずに。漫画家になるにあたって会社を辞めようと思ったタイミングで両親に相談したんですけど、両親もまったく知らなかったので「どういうこと?」って言われて。兄と弟のほうが漫画が好きで、私は興味がないと思われてたみたいで。かなり驚いてましたね。反対はされませんでした。友達にも内緒にしてたので、デビュー後に富山県でやったサイン会の新聞記事を見て知った友達もいて。いまでも知らない地元の人、たくさんいると思います。

 

―――お仕事のやりがいは?

フウワイ:目に見える反響があった時でしょうか。ずっと家に閉じこもって漫画を描いているので、単行本が書店に並んでるのを見ると「働いたな」と思えるし、そこから売れて重版がかかったりすると、「買ってくれる人がいるから頑張ろう」とも思えるし。でも、ネットの掲示板とかの感想は怖くて見れないです。

 

―――子どもの頃、好きだった漫画は?

フウワイ:「ジョジョの奇妙な冒険」とか「スラムダンク」とか。ハンドボール部に入る前に読んでいたら、バスケをやってたかもしれません。

 

―――ハンドボールをはじめられたのは?

フウワイ:中一です。部活で。たまたまおなじクラスの友人に誘われて。

 

―――富山だけじゃなくて、福井でも盛んなんですか?

フウワイ:高校や実業団で強いところがあるので。中学からはじめて社会人チームでもプレーしていました。なかなか行けてませんが、東京でもチームに入ってます。

 

―――ハンドボールの魅力は?

フウワイ:走ったり飛んだり投げたり全身を使うところだと思います。あとは、個人技だけでなくチームプレイも重要なところとか、全力を出し切れる爽快感とか。

 

―――そういった魅力を漫画で伝えようと。

フウワイ:はい。でも、私の主観に寄り過ぎないようにしています。「ハンドボールあるある」漫画だと、ハンドボールを知らない人に伝わらないので。ハンドボール人口はおおよそ10万人ぐらいと言われていますが、それ以外の多くの人にも楽しんでもらえる漫画にしたいですね。

 

 

―――外に出て気付いた、あわらの魅力は何ですか?

フウワイ:ちょうど今、実家の近所で新幹線の工事をやっていて。いよいよだなと思いますね。東京ではまだまだ知名度がないので。新幹線で人の往来も増えると思うので、温泉などの資産をつかってどれだけ人を呼べるか、が大事かなと。でも、個人的にはあまり変わり過ぎないでほしい。昔から変わらないから、安心する。「帰れる場所」という感じが、あわらの魅力ですかね。

 

―――あわら人とは?

フウワイ:変にガツガツした人がいない。みんな距離感が近いのがいいと思います。こどもの時はお祭りで太鼓をたたいたり。家庭をもって子育てしたりする人にとっては、すごくいい環境だと思います。

 

―――あわらに何か貢献したい思いは?

フウワイ:前任の編集長が私とたまたま高校が一緒で。「お前が売れたら、地元で講演会やろう」と言ってくれてましたね。締め切りに追われる身なので、実現してませんが。自分を育ててくれた町なので、将来的になんらかの恩返しできれば、と思います。

 

―――あわら贅沢とは?

フウワイ:「何も無い」がある、ことかな。都会にいる時とは違う、日がな一日なにもしないでもいい雰囲気があることは貴重ですね。

 

―――地元を舞台にして漫画とか?

フウワイ:例えば、かるたも「ちはやふる」で全国区になりましたし。じゅうぶん可能性はあると思います!

 

 

 

あぁ、あわら贅沢。