あわらといえば、やっぱり温泉。
そして、そこにある旅館やホテル。
今回の「あわら贅沢な人」は、
開湯から130年、
多くの旅人や観光客をもてなし癒してきた
「あわら温泉のDNA」を現代に引き継いで、
東京でユニークな宿泊事業を展開されている北野賢さん。
ゆくゆくは温泉ホテルにも挑戦したいとおっしゃる北野さんに、
お仕事のこと、東京のこと、
そして、今だから思う故郷のことを伺いました。
ぜひ、あわらの若者たちに読んでほしい
若々しさ溢れるインタビューになりました。
―――こどもの時に感じられたあわら市の印象は?
北野:思い浮かぶのは田園風景と野球をしたグラウンドです。小学校2年生から野球をやっていたので、毎日、自転車で田んぼ道をかけぬけ、伊井小学校の少年野球に通っていました。
―――野球をはじめられた、きっかけは?
北野:兄の影響です。仲が良かった兄に付いていく延長で、野球をはじめました。
―――野球の経験が今につながっている、と思うことはありますか?
北野:すべての基礎になっていると思います。体力面、人付き合い、チームワークなど・・・。鮮明に覚えているのは、兄世代の少年野球の最後の夏だった県大会予選で、当時セカンドだった僕の頭上を高さ2メートルくらいのライナーが飛んでいき、ボールに手が届かず、それで負けたことです。兄に「お前があの球を取っていれば負けなかったのに」と言われたのはすごく覚えています。すごく悔しくて、ずっと泣いていました。小学校4年生の夏でしたね。「自分が頑張らないと」という考え方の原点となった気がします。
―――野球を教えてくれた人は地域の人ですか?
北野:そうです、同じ地区の志田監督が長年監督をやられてました。伊井地区の野球少年はみんな志田監督に教わったはずです。いま考えるととても優しい監督さんでした。当時はこわくて、監督の目を気にしながら、緊張感のある中で野球をしていましたが(笑)。
―――中・高でハマっていたのも野球ですか?
北野:はい。正直、野球以外の記憶があまりないんです。だから、ずっと世間知らずだったと思います。進学した早稲田大学の入学当初は、いろんな人との出会いが衝撃的でした。いちばん覚えていることは「価値観が多様だ」と猛烈に感じたことです。それまで野球しかしてこなかったので、やっぱりスポーツしている男はかっこいいとか、勝手な自己肯定ばかりしていました。それが東京に来てみると、ファッション、音楽、芸術、尖った趣味など、さまざまな分野で活躍している人が沢山いました。一人一人が可能性に満ち溢れていて「こりゃ自分次第だわ」みたいな。とにかく、情報、環境が整っていると思いました。そういうのを東京で感じ、野球以外のことをゼロからとことんやってみたら、どこまで行けるんだろうと思ったことを覚えています。
―――東京で就職されて、不動産開発会社に?
北野:はい。コスモスイニシアという不動産開発会社に新卒で入社しました。内定時はリクルートコスモスという社名で、入社時はコスモスイニシアに社名変更をするという、ちょうど変革期でした。当時の社名変更の際に自分達でつくったTシャツは、10年以上経った今も使っています(笑)。 ボロボロですが。原点なので(笑)。プロジェクト・マネジメントができる仕事がいいなと思い就職活動をしていました。指揮者になれるポジションが早く成長できるんじゃないかと。取引する相手が多く、動くお金が大きいと、世の中を広く見れるのではと。あと、もともと建築、インテリアも好きでしたので。小さい頃、よく部屋の内装を変えていたのを覚えています。スピーカーの位置、机の位置、ベットの位置を変えたりとか、しょっちゅう部屋のレイアウトを変えていました。不思議と今につながっている点がすごくありますね。
その後、孫正義さんが取締役のアリババ株式会社という会社で「IT×グローバル」な仕事を経験。日本全国のさまざまな社長さんたちと相対するなかで、「経営者」や「経営」というものにも強く興味が沸いてきたそうです。そして、“テクノロジーで不動産の在り方を変える”ITベンチャー企業・イタンジ株式会社の創業時に参加。好きだった不動産業界に戻ってきた北野さんは、その後、みずからの不動産企画運営事業の会社・セブンガーデンを立ち上げることになります。その社是は、「場が生命力を持つ仕組みをつくる」。テクノロジー、クリエイティビティを駆使して、その場でしか味わえない「体験価値」を創ることで不動産の可能性を最大限引き出す、場づくりを模索されています。
―――独立されたきっかけは何だったんでしょう?
北野:ずっと不動産が好きだったので、「不動産とインターネットとグローバル」をからめた事業は面白いと思っていました。ただ、ITだけで不動産領域に参入するというよりもリアルな場を通じた、グローバールな視点での不動産サービスにチャレンジしたいと考えました。コンテンツ提供、現場運営を通じて新たな価値を提供したいと思いました。まずは、インバウンド領域の宿泊施設の企画運営事業からスタートしています。
―――プロジェクトは、土地、物件情報取得からスタートするんですか?
北野:そうですね。まずは土地情報や建物情報を弊社に持ち込んでいただき、企画、設計、デザイン、事業収支を作成します。ハード面、ソフト面の優位性を考え、収益性が担保できる形で不動産オーナー様や投資家にプレゼンをします。これらを超短期間で行います。こだわっていることは、スピード、透明性です。
―――利益の何%かをいただくビジネスモデル?
北野:売上げのパーセンテージです。従来の事業会社が透明にしたくない点を、弊社では敢えて開示します。誠実に、着実にアクションを続ければ、WIN-WINになれる結果が出せると信じているからです。
―――ひとことでいうと、セブンガーデンさんは何会社?
北野:不動産企画運営の会社です。観光、宿泊領域にて、不動産サービスを提供し、企画力と運営力を強みとしています。現在、消費者はモノ重視からコト重視にシフトしていますので、立地や築年数などの規制条件に縛られずその場でしか味わえない「体験価値」を創ることで不動産の可能性を最大限引き出したいと考えています。
北野さんが2018年の夏にオープンされたホテル・KIKKAは、まさに「コト重視」感覚の新しいホテルです。あわらで同級生だった大宮千絵さんも所属されている認定NPO法人テーブル・フォー・ツーとの協働によって、ホテル内で使ったお金の一部がアフリカの子どもたちに寄付される仕込みを構築されました。また、浅草駅徒歩2分のホテル・SEVEN GARDENも同時オープンされています。オープニングパーティーでは、福井から越前そば職人をお招きし、お客さまに手打ちそばを振る舞われたそうです。このように、さまざまなコンセプトのホテルを、東京を中心に全国で展開しようと日々、頑張っておられます。
―――東京に出てきて改めて思った、あわらの「贅沢」は?
北野:あわらといえば、温泉。個人的にも温泉が好きです。学生の頃から帰省の際には必ず芦原温泉に入浴に行ってます。
―――ゆくゆくは温泉ホテルとかも?将来の展望は?
北野:チャレンジしたいですね。宿泊事業に限らず、地元あわらとタイアップする企画ができると嬉しいですね。地方創生という言葉をよく耳にしますが、どうすれば実現性、持続性の高い取り組みができるかは日々自問しているテーマではあります。7garden(セブンガーデン)という社名には、7つの大陸、7つの海洋、すなわち地球を一つの庭と捉えて、視野を広く事業展開したいという思いと、庭のような、だれもが幸せで豊かな気持ちになれる場を創造したい、という2つの想いを込めています。まだまだ、基礎づくりで精一杯の会社ではありますが、後々は海外展開も視野に入れています。
◎株式会社7gardenのコーポレートサイト
https://7garden.co.jp/
◎株式会社7garden運営のホテル&ホステル
■Hostel SEVEN GARDEN(東京都台東区浅草)
https://seven-garden.com/ja/hotel/SEVENGARDEN
■Hostel KIKKA(東京都千代田区東神田)
https://seven-garden.com/ja/hotel/KIKKA
■Hotel Vintage(東京都中央区入船)
https://seven-garden.com/ja/hotel/vintage