2018年1月18日。私たちあわら贅沢取材班は、
大阪から特急サンダーバードに乗って真冬のあわら市へ向かった。
目的は「北潟湖の寒ブナ」。冬季の北潟湖でしか
味わうことができない幻の味、まさにあわら贅沢な逸品だ。
では、そもそも北潟湖とは、どんな湖か。
北潟湖は、福井県あわら市と石川県加賀市にまたがる、美しい湖。
一部が日本海とつながっており適度な塩分が溶け込んでいる。
生活用水がほとんど流れ込まない清潔な水環境とあって、
約40種の魚が生息している。
ゲンゴロウブナやマブナ、コイ、ハゼ、ウナギ、手長エビなどなど。
冬には白鳥をはじめとする渡り鳥も多く飛来する、
絶好の写真スポットでもある。
この豊かな生態系を有した湖で、しかも冬しか食べられない「寒ブナ」を求めて、
取材班は一軒の料理店さんを訪れた。
その名は、『茶谷水産』さん。
店先には堂々とした「川魚専門店」の文字。
ここだ。ここに間違いない。
私たちを笑顔で出迎えてくださったのは、
お父さんの代から北潟湖で漁師をされている網元の茶谷嘉雄さん。
今回は寒ブナのシーズンでお忙しいところを取材にご協力いただきました。
茶谷さん: もう50年以上ここで漁師をやってます。物心ついた時から北潟湖で遊んでましたから、そのまま自然に漁師になりました。
取材班: 北潟湖で美味しいものは、どんなものが?
茶谷さん: 今から食べていただく寒ブナのほかに、天然ウナギ、手長エビ、ワカサギ。あと、シラウオの卵とじなんかは絶品ですよ。
取材班: シラウオの卵とじ!天然ウナギ!聞いてるだけで、美味しそうです。そんななかでも、幻の味とされるのが寒ブナなんですね。
茶谷さん: はい。「寒ブナのあらい」と「すずめ焼き」ですね。これは、日本でもたぶん北潟で冬の時期しか食べられません。早速、寒ブナを獲りに行きましょう。
取材班: は、はい!
私たちは茶谷さんに促されるまま、お店の外へ。
まだ雪が残る道を慣れた足取りで茶谷さんは進む。
その先には、銀色に輝く北潟湖が。
お店からわずか徒歩1分、
湖のほとりにある船小屋に私たちはたどり着いた。
そこには、、、
出た!
いけすのなかでピチピチ跳ねている、これがマボロシの!
寒ブナだ!!!
体長30センチあまり。
冬の北潟湖の清らかな水の中で
その身を太らせた、これが幻の寒ブナである。
ピチピチとイキがいい。
くりっとしたその瞳は、どこか愛らしささえ感じるが、
茶谷さんは手慣れた手つきで素早くさばきはじめた。
その包丁さばきは、まさに職人芸。
突然のことに「うあっ、あっ」と驚く寒ブナは、
一気に三枚におろされてしまった。
そこから、一枚一枚ていねいに
薄造りに近い状態に
切り分けられた寒ブナの身は、
冷たい水でキュッと「締め」られた。
なんだか、水底でキラキラと
輝く宝石のようだ。
完成!
これが、冬の北潟湖名物「寒ブナの洗い」です!
まず、見た目が上品で美しい。
これに酢味噌をちょっと付けて食べると、
「こりっ」とした独特の歯ごたえとともに
寒ブナの淡泊なうまみが舌の上で踊ります。
淡水魚ならではの本当に爽やかな味わいで、
いくらでも食べられます。
取材班: 茶谷さん、ほんとに美味しいです!
茶谷さん: そうでしょ。うまいでしょ。
寒ブナの洗いに感動している私たちを横目に、
茶谷さんはもうひとつの幻の味「すずめ焼き」の仕込みに。
店内にあるいけすから、
今度は手のひらにおさまるぐらいの
小さなフナを何匹もザルにあげて、、、
下処理をして、
串を通して、
高温の専用オーブンにかけて、待つこと数十秒。
あ、あっ、ああ~!
フナのエラと尻尾が熱でくるっと反り返って、
それは、まさに、スズメが並んでいるかのよう。
これが「すずめ焼き」と言われるゆえんだったのか。
特製のタレにひたして焼く、
を何回か繰り返す。
やがて、厨房も店内も香ばしい香りでいっぱいに。
はやく食べたいっ!
パクっと、ひとくちで。
取材班: 甘くって、しょっぱい!
茶谷さん: いけるでしょ?こどもの時分は、お菓子代わりによく食べたよ。
取材班: ほんと、カリカリとスナック菓子みたい。なんだか懐かしい美味しさです。
茶谷さん: 20年ぐらい前に、「北潟湖の名物を何かつくりたい」と思って私が復活させたんです。昔を思い出して。懐かしいのと珍しいのとで贈り物として買ってくれるお客さまが多いですよ。
取材班: 今日は貴重な料理をありがとうございました。
茶谷さん: 夏も来てよ。夏はウナギ。花火もあるし。
取材班: ウナギ!花火!必ず来ます!
茶谷さん、ありがとうございました!