あわらでは、お隣の坂井市三国地区とともに
2011年より「うららん」という地域活動をおこなっています。
「オンパク(温泉泊覧会)手法」を取り入れ、
あわら・三国地区にある歴史・文化・自然・温泉などの資源を生かした
多彩なプログラムを開催。地域の活性化につなげているのです。
農産物の収穫体験や地元ガイドと昭和の産業遺産を巡るツアー、
着物と袴の着付け教室やおとなのワインスクールなど、
面白そうなプログラムがいっぱい!
今年は9月23日〜10月22日の約1カ月間にわたり、
全29のプログラムを実施しました。
●地域の魅力的なひとびとに出会える場をつくる
そもそも「うららん」は、どういう経緯でスタートしたのでしょうか?
発端は、「地域の魅力を再発見しよう!」という地元有志たちの思いでした。自分たちの地域には魅力的な観光資源がたくさんあるのに、それがうまく伝えられていない。どうすれば伝えられるのだろうかと考えたとき、「地元にはさまざまな分野で活躍する魅力的な人がたくさんいる。まずは、地元でどんな人がどんな活動をしているのか、自分たち自身が再確認することから始めてみよう」と考え、地元有志で実行委員会を結成。他県の事例やアイデア創出を学びながら、地元で活動する人を一堂に集めた体験交流の場を企画しました。主催者それぞれの得意ジャンルを生かした小規模の体験プログラムを約1カ月間の短期集中で開催する形でスタートし、今年で7年目。今ではすっかり秋の恒例となり、「うららん」の愛称でおなじみです。
ちなみに「うららん」とは、福井弁で「私たち」を意味する「うらら」と楽しい気持ちを表す「ランランラン」を組み合わせた造語からのネーミング。自分たちで地域を楽しく盛り上げ、前進していこう!という心意気が伝わリますね。
今年は、「古」「食」「美」「創」「愉」の5ジャンル、29のプログラムを実施しました。どのようなプログラムが行われたのか、いくつかピックアップしてご紹介しましょう。
●海に浮かぶ鹿島の森を眺めながら癒しのヨガ
あわら市と加賀市の県境となる吉崎地区にある蓮如上人記念館。浄土真宗の布教に努めた蓮如上人の足跡や吉崎の歴史が分かる資料館で、イベントスペースとしても地域に開放されています。10月15日、この蓮如上人記念館で開催されたのが、「海に浮かぶ鹿島の森を眺めながら癒しのヨガ」です。主催者の高嶋英巳子さんは、あわら市在住。日頃はタイ古式マッサージのセラピストとして活動しています。タイ古式マッサージは、別名「ふたりでするヨガ」とも言われていることから、高嶋さんは「あわらYOGA倶楽部 青空yoggy」という市民グループで、ヨガイベントも開催しています。今回の「うららん」もその一環で、「あわらには蓮如上人記念会館をはじめ、魅力的なスポットがたくさんあります。ヨガイベントを通じて、あわらの素敵な場所を知ってもらえたら」と話します。高嶋さんの言葉通り、蓮如上人記念館は北潟湖に面し、ガラス張りのイベントスペースからは天然記念物の鹿島の森の絶景が広がる開放的な空間。知る人ぞ知る人気スポットです。
当日は20人を超える参加者が来場。ヨガインストラクターの吉田綾さんの指導のもと、プログラムがスタートしました。心地よい音楽と先生のウィスパーボイスに耳を傾け、体を動かしていくうち、自然と心身がほぐれていきます。窓の外に広がる風景と自分とが一体化していくような不思議な感覚を味わいながら、約1時間のヨガプログラムは終了。プログラムはコーヒーチケットもセットになっており、ヨガを終えた後は、館内のカフェでコーヒータイムも楽しめます。
参加者からは、「蓮如上人記念館の存在は知っていたけれど、中に入ったのは初めて。素晴らしい景色に感動しました」「うららんには興味を惹かれる講座があるたび、何度も参加しています」「ヨガは初めてですが、楽しかったです」といった喜びの声が聞かれました。
●手書きのやさしさ、気持ちが伝わる筆文字講座
デジタル時代の今、手書きの文字がひとこと添えられていると、うれしくなることってありますよね。そんな温かみのある手書き文字の書き方を学べるのが、「気持ちが伝わる筆文字講座」です。主催者の森下沙貴さんは、整体師の傍、筆文字セラピストとしても活動。依頼に応じて、地域で筆文字教室も開催しています。そんな森下さんが教えてくれるのは、筆ペンで書くアート風の筆文字。習字や書道とは違う可愛らしい文字は独特の味があり、見ているだけでほっと気持ちが和みます。
10月17日、芦原温泉街の一角にあるカフェで開催された筆文字講座には、10人が参加。「手書きの年賀状を作りたい」「お年玉のポチ袋に一言添えたい」「自分のお店のメニューを書きたい」など、皆さんそれぞれの目標を持っての参加です。
森下先生から配られた筆ペンを手に講座はスタート! 可愛い文字が書きやすいよう筆の先はカットされており、角張らない丸みのある線を引けるよう工夫されています。
まずは、各自が自分の名前を書いてみます。普通に書くと習字のような改まった文字になりますが、「止め」や「ハネ」、横線と縦線のバランスや強弱で、文字の印象はガラリと変わります。最初は普通の文字しか書けなかった参加者の皆さんですが、先生のお手本を参考にひらがなを一通り練習していくうちに、少しずつコツがつかめてきます。漢字の場合は、「へん」や「つくり」に□があったら大胆に○にしたり、角のある部位は丸くカーブをつけることで、一気にやわらかい印象に! 丸の中に顔を描いてみたり、自由な発想でどんどんアレンジできます。さらにパステルを使った着色も。「謹賀新年」「ありがとう」など、思い思いの文字に色をつけて、それぞれの作品ができあがりました。
当日は、地元の洋菓子店とコラボした特製スイーツも振舞われ、参加者同士のおしゃべりにも花が咲きました。「童心に返って楽しめた」「じっくりと字を書く時間が持ててうれしかった」「正解がないから自分なりに楽しめる」「筆ペンだから気軽にできる。家でも練習したい」と感想を話し、大満足の様子でした。
うららん2017実行委員長の砂田恵美子さん
●主催者同士の交流やさまざまなコラボも
「魅力的な人がいれば、その人に会いにあわらに行こうと思ってもらえるでしょう? 来てもらって、ここでしかできない体験をしてもらうことで、思い出としてあわらを印象に残してもらえたらと思っています」と話すのは、うららん2017実行委員長を務めた砂田恵美子さん。砂田実行委員長によると、名簿に登録されたこれまでの参加者は約1300人。リピートして参加する人が多いのが特徴だと言います。人気のプログラムはツアーにもなり、県外からの参加者誘致にもつながっています。「県外から参加いただいたお客様に次回のパンフレットを郵送したら、『うららんの開催期間に泊まりがけで行きたいんだけど、おすすめの過ごし方は?』と、わざわざご連絡をいただいたことも。うれしい反響ですね」。
「うららん」の効果は、集客だけではありません。地元住民にとっても「身近な地域にこんな活動をしている人がいたんだ!」という新たな発見や地域の魅力を再認識するきっかけになっています。各プログラムを開催する主催者たちが交流する機会もあり、主催者同士がコラボして翌年に新しいプログラムを開催したり、旅館の宿泊プログラムとなったりと、主催者間の自発的な動きから活動の輪も広がっています。
今は女性の参加者が多い「うららん」ですが、「今後はターゲットを子供やファミリーに広げるなど、新しい取り組みも模索したい」と話す」と砂田実行委員長。「うららん」の輪は、これからも広がっていきそうです。