あぁ、あわら贅沢。
あわら贅沢とは?
おいしいトマトやメロンが育つ豊かな風土、 というあわら贅沢。
2017年9月25日

ビニールハウス

青空のふもと、海からの風に吹かれてハウスが建ち並ぶ。

 

「あぁ、こりゃうまい!」ってHAPPYですね。食べて美味しいものがある、という贅沢ほど贅沢なことはありません。ましてやそれが、その土地の水や土の恵みを100%とりこんで育った農産物だとしたら、なんだか心の中まで幸福感が沁みわたっていくような気がします。

あわら市から産地直送されてきたトマトとメロンを味わった時、「世の中にこんなにも美味しいトマトやメロンがあるんだ」という驚きとともに、青空のふもと、どこまでもどこもまでも続く田園地帯や緑豊かな丘陵地のパノラマ映像が脳裏にいきいきと広がりました。お話を聞いた農家さんのおひとりも「あわら贅沢なもの」として、この自然の素晴らしさをあげられていました。農作業のあいまにふと視線を上げると美しい景色が彼方まで広がっていて、吹きわたってきた風が汗をきもちよく癒してくれる。今回はそんな健やかな風土が生んだ美味しいものの秘密に迫ります。

 

越のルビー

鈴なりに実った、麻王さん自慢の越のルビー。健康的な赤。

 

●畑の赤い宝石、ミディトマト『越のルビー』

「お客さんの美味しかったの一言が、ぼくのやる気の源ですよ!」と満面の笑みで答えてくれたのは、あわら市で福井県発祥のミディトマト越のルビーを育てている麻王伝兵衛さん。ちなみに「麻王伝兵衛」は、先祖代々稲作農家だった麻王家の屋号なんだそうです。30代半ばで東京からUターンして専業農家となった麻王さんは、兼業農家だったご両親から田畑を受け継ぎ、いま、10棟のハウスで越のルビーを中心にズッキーニや葉物野菜などを作っておられます。越のルビーは一般的なトマトよりも糖度が高く、バランスのいい甘味と酸味が特徴。うまみがギュッと詰まっており、そのまま生で食べるのはもちろん、煮込み料理にも存在感を発揮します。また麻王さんは越のルビーを使った加工品づくりにも取り組まれていて、地元福井の老舗のお菓子屋さんとは爽やかな風味のトマトゼリーを。おなじく福井のイタリアンレストランさんとは“サラダにあうドレッシング”というコンセプトで越のルビーをふんだんに使ったトマトドレッシングを開発して販売されています。どちらも大変好評で、テレビ番組で紹介されたこともあるそうです。

 

麻王伝兵衛さん

お米や野菜づくりもされている、麻王伝兵衛さん。

 

ズバリ、麻王さんの越のルビーが美味しい秘密は何ですか?という質問をしたところ、なんともあわららしい答えが返ってきました。それは、カニ殻。麻王さんは他の農家さんとも連携して、あわら温泉の数ある旅館から出た越前カニの殻をブレンドして、オリジナルの肥沃な土づくりを実現されているのです。カニ殻に含まれるキトサンなどの栄養分が微生物と化学反応して、美味しい越のルビーを育ててくれる丈夫な土になるのだそうです。「あわら温泉街は日本一カニ殻が集まるんじゃないかなぁ。それをちゃっかり再利用してるわけです」と愉快そうな麻王さん。なるほど。地域の中での資源の好循環から、美味しいトマトが生まれているんですね。

 

カニ殻

これが、土を肥やしてくれる魔法の「カニ殻」。

 

そして、もうひとつの秘密は、直接販売と完熟収穫。麻王さんは行商による対面販売やネット通販など、流通を介さない直販を積極的におこなっているのでタイムロスが少なく、完熟状態で収穫したトマトをすぐにお客さんにお届けできる強みがあります。さらに、行商でお客さんと直接コミュニケーションをとれるので、お客さんの「声」を栽培に活かすこともできるし、麻王さんの「想い」をお客さんに伝えることもできるので、ここでも生産者と消費者の好循環が生まれ、ますます美味しい農産物づくりの追い風となっています。麻王さんは最後にこう語っておられました。「伝兵衛の伝は、伝える、という意味。すばらしい越のルビーという品種を、次世代に伝えたいという想いもあります」。

 

澤田メロン

日本中にファンがいる澤田メロン。驚くほど豊かな甘さ。

 

●澤田さんが全国に広げる、メロンの輪

次にお話を伺ったのは、あわら市西部の丘陵地で昭和58年から専業農家を営まれている澤田さんです。国営事業での農地改革をきっかけに、天候に左右されにくいハウス農業を導入。アムスメロン、ペルルメロン、アールスメロンなど多彩なメロンをご家族で栽培されてきました。「味が良くないと全国のライバルに勝てないから」と澤田さんがおっしゃるとおり、その美味しさは折り紙つき。あっ、と驚くほど、メロンの常識が覆えるようなみずみずしい甘さと芳醇さです。まさに、皮まで美味しい澤田さんのメロン。電話やファックスで注文を受けて直接販売されているのですが、そのファンや御贔屓のお客さまが全国にいらっしゃるそうです。メロンの収穫が最盛期を迎える7月中旬はちょうどお中元のシーズン。「うちのお中元は澤田さんのメロンって決めてるの」というお客さまもたくさんおられて、そのメロンを贈られた人がまた新しいファンになって注文してくださるという機会も多いそうで、「どんどん“メロンの輪”が広がってきて今に至っているんですよ」と澤田さんは顔をほころばせます。

 

澤田さん

風が抜ける気持ちいい作業場で、澤田さんのお話を聞く。

 

そんな澤田さんのメロンの美味しさの秘密は、農地の「土」にあるそうです。火山灰を多く含んだあわらの土壌はもともと農作に適しているのですが、澤田さんは特に土をだいじに手間暇かけて肥やし、メロンも1年に一作しかせず「土を酷使しない」よう心がけているそうです。「なんと言っても、土。土が良ければ気候の変化や病気にも耐えられる健康的なメロンが育つ」んだそうです。雪や日照不足でなかなか冬に営農しにくいあわら市の農家にとって、土は自分たちを支えてくれる本当に大事な味方なので、手塩にかけて土づくりをされているのです。


澤田さんの奥様

いつもニコニコ、ほがらかな澤田さんの奥様。

 

澤田さんの奥様に、「あわら贅沢なもの」をお聞きしました。「それは食卓です」とのこと。三世代同居も多いあわら市は、家族みんなが食卓を囲んで美味しいものを食べています。野菜やフルーツなど農産物はもちろん、海の幸、山の幸も豊富。「地元の素材で作られた美味しいものが並ぶ食卓こそ、あわら贅沢です」と奥様は笑顔で教えてくださいました。

 

 

 

あぁ、あわら贅沢。